
6DEC.
ラ・ヴィアンローズ 77.
…7.こんなに間近でユノの横顔を見るのは久しぶりだった。会いたい気持ちが募り、いっそうユノを慕う想いが強くなったように感じる。ダウンライトに照らされたユノの横顔…整った顔の造作がひときわ輝いている。「ドラマの感想…聞かせてもらえますか?ちょっと怖いけど。ははは」本当はもっとロマンチックな話をしたいと思ったが…チャンミンは笑って誤魔化した。「感想なんて…チャンミンは完璧だったよ。新人であそこまで出来れば、もう一人前の役者だよ。俺がいまさら感想なんて烏滸がましくて」「そんなこと言わないでください。僕が立ち直れたのはユノさんのおかげなんだから…」「うん…じゃあ、これからのこと…未来の話をしようか。チャンミンには、これから選ぶのに苦労するほど仕事が来る。若いうちはなんでもやってみることが重要だと思う。どんな仕事も、まずは飛び込んでやってみてほしい。無駄な努力なんて、ひとつもない。どんな苦労も経験も…きっとチャンミンの大事な血と肉になるから」凛とした眼差しで、ユノはチャンミンを見た。その鋭さと重みにチャンミンは思わず息を呑んだ。「ん?俺、おかしなこと言った?」「あ、いえ…そうじゃなくて…なんだかユノさんが…いつものユノさんじゃないみたいで。うまく言えないんですけど雰囲気が変わったっていうか…言葉がここにズシンと響いて…」チャンミンは自分の胸を拳で叩いた。目の前のユノは、以前のユノとは違って見えた。男臭さはどこかへ消え去り、髪型も身なりも整えられ、野生的な「漢」ではなく、都会的な「男」になった。だが、それだけではない何か…内面から滲みでる知的でスマートな佇まいが、それはそれでチャンミンの好みではあった。「あ、でも…ユノさんの言葉、まっすぐ胸に響きました。僕がいま一番欲しかったのは、ユノさんのアドバイスだったから…」「そう?なら…よかった。本当は初仕事の記念に、何かプレゼントしたかったんだけど。俺も初めて仕事をやり遂げた時、ヒョヌと記念になるものを交換したんだ。俺はヒョヌに時計を贈った。ヒョヌは俺にオイルライターをくれたよ。もうタバコはやめたけど、ライターは大事に持ってる」「へえ…素敵ですね」「チャンミンは…何がほしい?考えて、迷って…結局、何がいいかわからなかった。俺はそういうのはどうも苦手で。なんでも言えよ。チャンミンが成功したことへのお祝いの気持ちだから」そう言って、白い歯をのぞかせて微笑むユノは、いつもと変わらない…飾らない素顔のユノに見えた。「そんな…ほしいものなんて…あ、ワインが空になりましたね。ちょっと待っててください。たしか、母さんのワインコレクションがあるはず…」はぐらかすようにチャンミンは席を立った。《本当にほしいものなんて…》ワイン用のクーラーに年代物のボトルを見つけ、チャンミンはまた栓を抜いた。疲れているのか…ワインの匂いだけでも酔いそうになって、頭がクラクラしてくる。「これで、チャンミンも百花フィルムの『スター候補』になった。ジョンウも、仕事もソユンとのことも上手くいってるようだし…二人とももう大丈夫だ。〝ユノヒョン〟の役目が果たせたんじゃないかって」「いえ!僕とジョンウにとって、ユノさんはずっと…ヒョンであり、尊敬する先輩であり目標です!そんな…僕たちの手を離すような言い方…やめてください!」興奮したチャンミンがテーブルを叩いた。ワイングラスが倒れて落ち、ラグが深紅に染まった。「チャンミン、大丈夫か?!ケガしてない?」咄嗟にユノがチャンミンの手を握った。チャンミンは勢いのまま、ユノの腕を引き寄せた。「チャン…ミン?酔ってるのか?」「酔ってます…酔ってるから…言います。僕がいま一番ほしいものは…絶対に手に入らないものなんです。どんなに渇望しても、どんなにお金を積んでも手に入らない」「言ってみて。必ず俺が…」「ユノさん…ユノさんの『心』が…ほしいです。愛してほしいなんて言いません。好きになってくれなくてもいい。ほんの少しだけでも…ユノさんの心の中に僕がいたら…それだけで僕は生きていけるから」ユノの長い腕がチャンミンの腰を抱き寄せた。半袖の腕が重なって、そこだけが熱を帯びていた。「好きだよ、チャンミン…俺はチャンミンが好きだ。男同士の色恋なんて興味はないけど…チャンミンのことは好きだ。好きだよ」「ユノさん…これって、夢じゃないよね?僕、酔っぱらってるから…」ユノは…チャンミンの髪を優しく撫で、そっと口づけた。「これでも?夢だと思う?」「ユノさん…!」ふうっと体中の力が抜けた。まるで雲の上をふわふわと歩いているような感覚…ユノの背中にしがみつき、溢れる涙の海にチャンミンは溺れた──

大切な人

best of me

ホビたんは成功したオタク♥️ミ